犬と猫の地域包括ケアをめざして――第6回 ファシリテーション記録(2025年12月16日)

第6回は、いよいよユーザーインタビュー(プロブレムインタビュー)実施に向けた「設計の詰め」に入る回でした。
前回(第5回)で整理した3つのフレーム(緊急/慢性フォロー/後悔・理想)を土台にしながら、今回は 「実際に聞ける形」へ落とし込むことに集中しました。

新規事業は、良いアイデアほど“早く作りたくなる”ものです。
ただ、作り始めた瞬間に「聞くべきことを聞いていなかった」が起きる。
その事故を防ぐための“地味だけど最も効く工程”が、インタビュー設計です。


■ セッション概要

日時:2025年12月16日(火)10:00〜12:00
テーマ:プロブレムインタビュー実施設計(ガイド・進行・記録・安全設計)


■ 本日の目的

目的: インタビューを「実施できる形」に仕上げ、
実施後に“材料が残る”状態(記録・属性データ・示唆)まで設計する。

具体的には、次の3点です。

  • インタビューの開始〜終了までの流れを確定する
  • 質問項目を「順序」と「言い方」まで落とす
  • 個人情報・記録・同意など、実施時の安心設計を整える

■ 今回詰めたポイント(設計の肝)

1)インタビューの「導入」を作る

インタビューは、内容より先に場の空気で結果が決まることがあります。
そこで今回は、冒頭に“関係性構築の時間”を明確に取り、次の順番を合意しました。

  • 場の説明(今日は何のための時間か)
  • 守秘・匿名化・記録の扱いの共有
  • 同意の確認(録音等は必ず事前承諾)
  • アイスブレイク(話しやすさをつくる)
  • そこから本題へ

「聞く」前に「安心して話せる」状態を作る。
これは、特に“感情が揺れるテーマ”の事業では必須です。


2)属性確認は“精度”と“配慮”の両立で

インタビューの価値は、体験談だけでなく 「どんな人の体験か」 が揃って初めて立ち上がります。
一方で、個人情報を根掘り葉掘り聞くと途端に空気が冷えます。

そこで今回は、

  • 口頭で聞く範囲
  • 書いてもらう範囲
    を分け、必要に応じて紙で記入してもらう形に整理しました。
    (外部公開しない/匿名化する前提での運用設計もここで固めています)

3)質問は「自然な会話」になるように“並び替える”

良い質問が並んでいても、順番が悪いと答えが浅くなります。
今回の調整で意識したのは次の流れです。

  • 日常(生活・制約・普段の工夫)
  • 情報収集(どこで何を見ているか)
  • 病院利用(選び方・相談のしかた・迷い方)
  • 体験の深い場面(在宅ケア/迷い/決断)
  • 最後に「本当はどうしてほしかったか」

つまり、浅い話→深い話へ、自然に入っていく構造です。


■ 緊急フェーズは「質問」ではなく「行動観察」へ

第5回で確認した通り、急変時は言語化が難しい。
そのため今回は、緊急シーンでのヒアリングを “行動観測”に寄せる設計に深めました。

  • 0分〜数分の間に何をしたか
  • どこで判断が止まるか
  • 誰に助けを求めるか(求められないか)
  • 連絡できない時間帯が行動をどう変えるか

「スマホで検索しましたか?」ではなく、
“その瞬間に起きたことを再現してもらう”
ここを徹底するほど、サービス設計の精度が上がります。


■ 記録とプライバシーの扱いも「設計する」

インタビューは、実施した瞬間より “実施後の扱い” が重要です。
今回は、録音・メモ・データ管理の方針を整理し、

  • 記録を残す(ただし外部公開時は匿名化)
  • 参加者が不安にならない説明を冒頭に入れる
  • 得られる情報の範囲をあらかじめ想定しておく
    といった「安心して話せる運用」を固めました。

■ 次のステップ

次回以降は、

  • 実際のインタビュー
    を進め、年内~1月中に複数名へのヒアリングへ移っていきます。

また、インタビューで得た情報は、体験談として終わらせず、
「困りごとの構造」「行動パターン」「情報経路」「病院利用実態」として整理し、
サービス・プロダクトアイデアの検討材料にしていく方針です。


■ ファシリテーターとしての所感

今回あらためて感じたのは、
“聞き方”は、そのまま“事業の品質”になるということです。

新規事業の初期は、正解がない。
だからこそ、現場のリアルを集める工程が「未来の意思決定の根拠」になります。
インタビュー設計は地味ですが、ここで丁寧にやったプロジェクトほど、後工程が速い。

そしてもう一つ。
この領域は、課題の重さゆえに「ネガティブ」に寄りがちです。
だからこそ、サービスは“マイナスをゼロにする”だけでなく、
日常を少しでも前向きに変換できる形として構想していく必要がある。
その前提が、今回の設計にも自然に反映されていきました。


ファシリテーター: 株式会社aund 代表取締役 栗林 陽
テーマ: 新規事業ファシリテーション(探索〜検証フェーズ)



第1回目の投稿:https://aund.jp/archives/2020
第5回目の投稿:https://aund.jp/archives/2157