犬と猫の地域包括ケアをめざして――第4回 ファシリテーション記録(2025年11月18日)

今回の第4回ミーティングでは、
これまで整理してきた課題の実在を確かめるための「プロブレムインタビュー設計」に着手しました。
同時に、より広い市場の反応を知るための
アンケートリストの作成も視野に入れた回となりました。


■ セッションの目的

目的: 3つの主要課題が本当に存在するのかを探るため、質問設計と方向性を明確にすること。

インタビュー対象は大きく2つ。

  1. エバンジェリストカスタマー(インフルエンサー的存在)への個別インタビュー
  2. 一般飼い主層への市場調査アンケート

しかし、進行の途中で議論は自然と「サービスの方向性の再確認」に発展。
チーム全体で、提供したい価値の本質をもう一度すり合わせる時間となりました。


■ 話し合われた3つの主要課題

今回、ヒアリング設計の前提として共有された仮説は以下の3点です。

  1. そもそも「往診」という概念が一般に浸透していない
     - 「緊急往診」と「通常の終末期往診」という2つの型がある
     - それぞれで求められる体験がまったく異なる
  2. 問い合わせ経路が複雑で、利用をためらう
     - 電話、LINE、フォームなど複数の経路があり、どれを使えば良いか分かりにくい
  3. 診療後の経過共有・連絡頻度にばらつきがある
     - 継続的な信頼関係を築くうえで、情報共有のリズムが重要

■ 議論のポイント

ペットの往診というテーマを掘り下げる中で、
「人がどんなきっかけでこのサービスを探すのか」という構造に焦点が当たりました。

多くの飼い主にとって、検索や問い合わせは“何かが起こった後”

  • 病気の発症
  • 家でひとりで看病する状況
  • SNSや検索で「往診」を探す
    しかし実際は、「往診」という言葉自体が検索で上位に出てこない。

この現実を踏まえ、議論は次の仮説へと進みました。

「緊急時の単発対応」だけでなく、
“日常の延長として相談できるサービス”としての認知が必要ではないか。

たとえば、「10歳からの訪問ケア」「いつもの生活を、もう少し支えるサービス」といった
前向きな表現が重要である、という共通認識が生まれました。


■ サービスコンセプトの再定義

ミーティングの後半では、サービスの核となるニュアンスを再整理しました。
単なる“介護”ではなく、「マイナスをポジティブに変換する」体験を提供する。

  • 「臭い」「汚れ」などのネガティブをどう乗り越えるか
  • 「きれいでいてほしい」「可愛くいさせたい」という飼い主の願いをどう支えるか
  • 「人を呼べなくなる」「孤立していく」負の連鎖をどう防ぐか

介護や看取りという“終わりに向かう時間”を、
“大切に生きる時間”に変えるサービスへ。

この方向性の言葉合わせは、プロジェクトの芯を再確認する重要なステップでした。


■ 宿題と今後の展開

今回は、当初予定していたインタビュー項目の設計まで到達できなかったものの、
その背景には「何を伝えたいのか」「どんな体験を届けたいのか」という
根幹の共有があったことが大きな成果です。

次回までの宿題は以下の2点です。

  1. エバンジェリストカスタマーへの質問項目案を各自で検討すること
  2. 市場アンケートに落とし込む設問の方向性を持ち寄ること

実際のヒアリングは12月中旬を予定しており、
次回(12月2日)はその設計を再開します。


■ ファシリテーションの視点

今回のセッションでは、ファシリテーターとして
「構造よりも意図を深める」ことを意識しました。
予定通りに進まない会議こそ、対話の本質が現れる瞬間です。

チームが「何のためにこの事業をするのか」という根源的な問いに立ち戻れたことで、
今後の仮説検証にも一貫性が生まれると感じました。
形式的な進行よりも、共通の世界観を育てる時間こそが、
この段階で最も意味のある“前進”だったといえます。


ファシリテーター: 株式会社aund 代表取締役 栗林 陽
テーマ: 新規事業ファシリテーション
次回予定: 2025年12月2日(第5回 ヒアリング設計セッション)

3回目の投稿:https://aund.jp/archives/2038

関連サービス:
「デザイン思考」https://aund.jp/service/design-thinking
「デザインスプリント」https://aund.jp/service/design-sprint