管理職ごとにマネジメントがバラバラになる理由|「上司ガチャ」を仕組みで減らす方法

「部署によって、評価の基準も指導のしかたもまるで違う」「同じ会社なのに、どの上司の下に配属されるかで育ち方が変わってしまう」。人事・組織開発の担当者から、こうした声をよく聞きます。若手のあいだで広がった「上司ガチャ」という言葉も、この“管理職ごとのばらつき”を映したものです。

多くの企業は、この問題に対して管理職研修や評価者研修で「個々の管理職のスキルを底上げする」ことで対応しようとします。しかし、それだけではばらつきはなかなか縮まりません。本記事では、管理職のマネジメントがバラバラになる構造を整理し、個人の力量に頼らず「組織の型」でばらつきを減らす方法を解説します。

管理職のマネジメントのばらつきは「能力差」だけでは説明できない

よく挙げられる原因と、その限界

マネジメントのばらつきの原因として一般的に挙げられるのは、「体系的に学ぶ機会がないまま管理職になった」「プレイヤー業務と兼務で余裕がない」「部下の人数が多すぎる」といった点です。いずれも事実ですが、これらはすべて“個々の管理職の条件”の話です。仮に全員が同じ研修を受け、同じだけ時間があったとしても、それぞれが自分なりの解釈でマネジメントをすれば、結果はやはりバラバラになります。

多くの管理職は「なぜそのやり方なのか」を説明できない

管理職に「あなたの部署では、なぜ今の定例会議のやり方をしているのですか」と尋ねると、「前任者から引き継いだから」「昔からこうだから」という答えが返ってくることが少なくありません。マネジメントの多くは、意図して設計されたものではなく、これまでの流れで回っているのです。やり方の根拠が言葉になっていないため、部署を越えて比べることも、良いやり方を横に広げることもできません。ここに、ばらつきが生まれ続ける本当の理由があります。

マネジメントのばらつきが生まれる3つの構造

構造1:「何を成果とするか」が部署ごとに暗黙のまま

部署のアウトプットが明文化されていないと、管理職は自分の経験から「大事なこと」を判断します。ある課長は数字の達成を、別の課長はプロセスの丁寧さを重視する。評価や指導が食い違うのは、多くの場合、スキル以前に“見ているもの”が違うからです。

構造2:会議や1on1の運営が管理職任せになっている

マネジメントは、日々の定例会議や1on1といった「場」を通じて実行されます。ところが、その場の目的や進め方は管理職個人に委ねられていることがほとんどです。ある部署では定例会議が意思決定の場になり、別の部署ではただの報告会になっている。場の設計の差が、そのままマネジメントの質の差になります。

構造3:研修が「個人の学び」で終わっている

管理職研修で良いフレームワークを学んでも、それを職場でどう使うかは個人に任されがちです。持ち帰り方が人によって違えば、研修後にかえってやり方が多様化することさえあります。管理職研修が「意味ない」と感じられる理由の多くも、この「学んだあとの運用」が設計されていないことにあります。

管理職のばらつきを減らす「マネジメントの型」のつくり方

ばらつきを減らすために必要なのは、管理職を画一的なマニュアルで縛ることではありません。部署ごとの違いを認めたうえで、「どの視点でマネジメントを捉えるか」という共通の土台、つまりマネジメントの型を持つことです。具体的には、次の5つの視点で自部署のマネジメントを点検してみるのが有効です。

5つの視点でマネジメントを捉えなおす

  1. アウトプット:この部署は何を成果とするのか。一文で言えるか
  2. プロセス:その成果を生む重要な仕事の流れは何か
  3. 場:定例会議・1on1など、どの場でマネジメントを回しているか
  4. 育成・支援:メンバーをどう育て、どう支えているか
  5. 仕組み・文化:判断基準や共通ルールとして何を明文化しているか

ポイントは、成果やプロセスといった「ハード面」と、場や育成、文化といった「ソフト面」を1つの枠組みで同時に見ることです。どちらか一方だけを整えても、マネジメントは安定しません。

「言い切れない視点」から手を打つ

5つの視点を管理職同士で確認してみると、多くの場合「うまく言葉にできない視点」が見つかります。たとえば、アウトプットが一文で言えないなら、まずそこを管理職とメンバーで合意する。合意ができると、定例会議で話すべきことが変わり、評価の軸も揃いはじめます。弱い視点を1つ特定し、そこから順に手を打つことで、変化は日常の運営に波及していきます。

まず一部門で型をつくり、横に広げる

いきなり全社で統一しようとすると、現場の反発を招きがちです。まずは一部門で5つの視点を点検し、実際に回る型をつくる。その型を言葉にして他部門と共有することで、「うちの会社のマネジメントの型」が少しずつ育っていきます。プレイングマネージャーが多い組織では、部下が育たない「個人頼み」の育成から抜け出すきっかけにもなります。

まとめ:管理職のばらつきは「個人」ではなく「型」で減らす

管理職ごとにマネジメントがバラバラになるのは、個々の能力の問題だけではなく、マネジメントを捉える共通の視点が組織にないことが大きな要因です。アウトプット・プロセス・場・育成・仕組みの5つの視点で現状を点検し、弱いところから型をつくる。その積み重ねが、「上司ガチャ」に左右されない組織への第一歩になります。


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本記事で紹介した5つの視点を、管理職の方がご自身で確認できるチェックシートにまとめました。どの視点が「言い切れない」かを把握することが、マネジメントの型づくりの出発点になります。

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この記事を書いた人

栗林 陽

栗林 陽(くりばやし よう)

株式会社aund 代表取締役 / 会議カルチャー改革ファシリテーター

新卒で東芝ソリューション(現・東芝)にて営業・PJ支援を経験後、ジェイテックスマネジメントセンター(現学研グループ)で企業研修の企画・販売に従事。新規事業部門でSaaSプロダクトマネージャーを経て、学研ホールディングス人事戦略室に出向し研修0→1立上げ・人材育成領域を担当。2019年、株式会社aund設立。会議ファシリテーション・組織開発・ワークショップ設計を強みに、現場に根づく変革を支援する。

学びの系譜
  • 2017年|社会起業大学 修了
  • 2019年|慶應MCC 組織開発実践講座 修了
  • 2022年|東京デザインプレックス研究所 UIUX講座 修了
  • 2026年|AI経営寄付講座 受講
  • 2026年|青山学院大学 ワークショップデザイン講座 修了
アドバイザリー実績
  • 2025年6月〜2026年3月|株式会社IKUSA 研修事業アドバイザリー
  • 2026年4月〜現在|株式会社東京チェンソーズ 研修事業アドバイザリー
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