新入社員研修の企画書の書き方|稟議が通る構成例と準備の手順

10月から12月は、多くの企業で翌年度の予算編成が進む時期です。新入社員研修を見直したい、外部の研修会社を使いたいと考えている人事・人材育成担当者にとっては、企画書と稟議書を通せるかどうかが最初の関門になります。

ところが、新入社員研修の企画書は「昨年度の資料の日付を変えて出す」ことになりがちです。それでは、カリキュラムを変えたい理由も、追加の予算が必要な理由も、決裁者に伝わりません。

この記事では、新入社員研修の企画書に入れる項目と構成例、書く前の準備、稟議を通すための書き方のポイントを、人事担当者がそのまま使える形で整理します。最後に、上司や経営層から聞かれやすい質問への答え方もまとめました。

新入社員研修の企画書と稟議書は役割が違う

最初に整理しておきたいのが、企画書と稟議書の違いです。社内で同じ意味で使われることもありますが、役割を分けて考えると書きやすくなります。

  • 企画書:研修の中身を説明する書類。目的、到達目標、カリキュラム、運営体制、効果測定の方法などを、経営層・配属先・講師と共有するために書く
  • 稟議書:お金と契約の承認を得る書類。費用、支払先、契約期間、予算区分、期待される効果を、決裁者が短時間で判断できるようにまとめる

企画書が「何を、なぜやるのか」の説明だとすれば、稟議書は「このお金を使ってよいか」の判断材料です。稟議書に企画書の内容をすべて書き写す必要はなく、企画書を添付資料にして、稟議書本体は1枚に収めるのが基本です。

会社によっては、企画書と稟議書が一体になった書式を使っている場合もあります。その場合も、前半を「中身」、後半を「お金と判断」に分けて書くと、決裁者が読みやすくなります。

新入社員研修の企画書に入れる8つの項目と構成例

新入社員研修の企画書は、次の8項目で構成すると抜け漏れが起きにくくなります。順番にも意味があり、「なぜやるのか」から始めて「どう確かめるのか」で終わる流れにしています。

1. 背景と課題

なぜ今年、この研修が必要なのかを書きます。「例年実施しているため」ではなく、昨年度の新入社員の様子、配属先からの声、事業の変化など、見直しのきっかけになった事実を書きます。昨年度の研修アンケートや配属先へのヒアリング結果があれば、ここに要点を載せます。

2. 研修の目的と1年後の姿

研修の目的は、「ビジネスマナーを身につける」のような研修内容ではなく、「配属後に何ができる状態になってほしいか」で書きます。おすすめは、入社1年後の姿から逆算する方法です。たとえば「配属3か月後に、担当業務について上司に状況報告と相談ができる」「1年後に、チームの会議で自分の意見と根拠を言える」のように行動で書くと、あとの効果測定にもつながります。

3. 対象者と規模

対象人数、職種・配属予定、入社時期の違い(4月入社と秋入社・中途入社の扱い)を書きます。人数によって、全員一斉かクラス分けか、講師を何名置くかが変わるため、費用の根拠にもなります。

4. 期間とスケジュール

研修期間と、配属・フォローアップ研修までの全体スケジュールを書きます。入社直後の集合研修だけでなく、配属後のOJT期間や数か月後のフォローアップまでを1本の線で示すと、「研修をやって終わり」ではないことが伝わります。

5. カリキュラムと実施方法

研修の内容を、日ごとまたはテーマごとに一覧にします。あわせて、集合研修・オンライン・eラーニング・ワークショップなどの実施方法も書きます。項目を並べるだけでなく、各テーマが「2. 研修の目的と1年後の姿」のどれに対応しているかを示しておくと、なぜそのテーマが必要なのかを説明しやすくなります。

6. 運営体制と役割分担

人事、講師(社内・社外)、配属先の上司やOJTトレーナー、先輩社員などが、それぞれ何を担当するのかを書きます。外部に委託する場合は、委託範囲(企画・講師・教材・運営)を明確にします。配属先の役割をここで書いておくと、研修後に現場へどうつなぐかが企画段階から決まります。

7. 予算と費用の内訳

外部委託費、講師料、会場費、教材費、宿泊・交通費、社内講師の工数などを項目ごとに分けて書きます。1人あたりの費用も添えると、前年度や他の施策との比較がしやすくなります。

8. 効果測定の方法

研修後に何を、いつ、どう確かめるかを書きます。受講直後のアンケートや理解度テストだけでなく、配属後の行動の変化を上司やOJTトレーナーへのヒアリングで確かめる計画まで入れておくと、その結果が翌年度の企画書の「背景と課題」の材料にもなります。

新入社員研修の企画書を書く前にやっておく4つの準備

準備1:経営層と配属先の期待を聞く

企画書の中身は、人事だけで決めないことが大切です。経営層には「どんな新入社員に育ってほしいか」を、配属先の管理職には「配属時点で最低限できていてほしいこと」と「昨年度の新入社員がつまずいたこと」を聞きます。聞いた言葉を企画書の「背景と課題」に引用すると、決裁者にとって自分ごとの企画になります。

準備2:昨年度の研修を振り返る

昨年度の研修アンケート、理解度テスト、配属後の上司の声を集め、「残すもの」「変えるもの」「やめるもの」に分けます。見直しの根拠がないまま新しいカリキュラムを提案すると、「去年と何が違うのか」という質問に答えられません。

準備3:予算編成のスケジュールを確認する

新入社員研修の企画は、研修の数か月前ではなく、前年度の予算編成に間に合わせる必要があります。社内の予算申請の締切と、外部の研修会社や会場の予約が埋まる時期を確認し、そこから逆算して企画書の提出日を決めます。年間の準備の流れは「来年度の新入社員研修はいつから準備する?大型採用企業の年間スケジュールと設計のポイント」で詳しく整理しています。

準備4:内製か外部委託かを決める

すべてを社内で行うのか、一部を外部の研修会社に委託するのかによって、企画書に書く費用も体制も変わります。判断の観点は「新入社員研修を外部委託するメリット・費用相場・失敗しない業者選び3つのポイント」でまとめています。

新入社員研修の稟議を通すための書き方のポイント

企画書ができたら、稟議書にまとめます。筆者は研修会社で企画を提案する側と、グループ本社の人事で内製研修を立ち上げて社内の承認を取る側の両方を経験してきました。その経験から言えるのは、決裁者が見ているのは内容の細部よりも「判断に必要な材料がそろっているか」だということです。

冒頭の数行で結論を書く

件名と冒頭には「何に、いくら使い、何が得られるのか」を書きます。たとえば「2027年度新入社員研修(対象〇名・〇日間)の外部委託費として〇〇円の支出を申請します。配属3か月後に、担当業務の報告・相談ができる状態を目標とします。」のように書き、詳細は添付の企画書に任せます。

費用を「1人あたり」と「前年比」で示す

総額だけでなく、1人あたりの費用と前年度との差額を示します。増額になる場合は、増える理由(クラス数の増加、フォローアップ研修の追加など)を1行で添えます。

比較した選択肢を書く

複数の研修会社を比較した場合や、内製と外部委託を比べた場合は、その比較結果と選んだ理由を簡潔に書きます。「なぜこの方法なのか」に先回りして答えておくと、差し戻しが減ります。

リスクと確かめ方をセットで書く

新しいカリキュラムには、うまくいかない可能性もあります。「初年度のため、受講後アンケートと配属先ヒアリングで効果を確かめ、翌年度の継続を判断する」のように、リスクと確かめ方をセットで書くと、決裁者は承認しやすくなります。

配属後まで含めた効果測定を書く

研修の効果は、受講直後の満足度だけでは判断できません。配属後の行動の変化を、いつ、誰が確かめるのかを稟議書にも1〜2行で書いておくと、研修が「やりっぱなし」にならないことが伝わります。研修の内容を配属先で活かすための仕組みについては「新入社員研修が現場で活かせない理由|配属先に「共通言語」がないと学びは消える」も参考にしてください。

よくある質問(新入社員研修の企画書・稟議)

Q. 上司から「去年と同じ内容でいいのでは?」と言われたら?

昨年度の振り返り(準備2)で集めた事実を示します。「配属先から〇〇という声があった」「アンケートで〇〇の項目が低かった」など、変える理由を事実で説明し、変えない部分もあわせて示すと、全面的な作り直しではないことが伝わります。

Q. 経営層から「研修の効果はどう測るのか」と聞かれたら?

受講直後の反応(アンケート)、理解度(テストや演習の成果物)、配属後の行動(上司・OJTトレーナーへのヒアリング)の3段階で測る計画を示します。すべてを数値で示すことよりも、「いつ、誰が、何を見て判断するのか」が決まっていることのほうが説得力を持ちます。

Q. 「ビジネスマナーなら社内でできるのでは?」と聞かれたら?

社内でできる部分と、外部に任せる部分を分けて説明します。マナーや社内ルールは社内講師で行い、考える力やチームで仕事を進める経験など、社内に教える人や時間を確保しにくいテーマを外部に委託する、という組み合わせも選択肢になります。

Q. 企画書はいつまでに出せばいいですか?

社内の予算申請の締切に合わせるのが基本です。翌年4月入社の研修であれば、前年の秋から冬にかけて企画を固めて予算を確保しておくと、研修会社や会場の選択肢を残せます。

まとめ:新入社員研修の企画書は「1年後の姿」から書く

新入社員研修の企画書は、カリキュラムの一覧ではなく、「配属後にどんな状態になってほしいか」から逆算した計画です。背景と課題、目的と1年後の姿、対象者と規模、期間とスケジュール、カリキュラムと実施方法、運営体制、予算、効果測定の8項目をそろえましょう。稟議書では冒頭で結論と費用を示し、比較した選択肢とリスクの確かめ方を添えると、決裁者が判断しやすくなります。

経営層と配属先の声を聞くところから始めれば、企画書は人事だけのものではなく、会社全体で新入社員を育てる計画になります。

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この記事を書いた人:栗林 陽(株式会社aund 代表取締役)
研修会社(現・学研グループ)に10年半在籍し、企業研修の企画営業、新規事業でのプロダクトオーナー、グループ本社人事での内製研修の立ち上げを経験。研修を「売る側」と「買う側」の両方を知る立場から、2025年に株式会社aundを設立。管理職・新入社員向けの研修設計と組織開発を支援している。

企画書の「1年後の姿」を、研修の中身に落とし込むために

企画書で描いた「配属後にできてほしいこと」を実現するには、研修の中で何を経験させるかが鍵になります。aundの新入社員研修「アイデアを、カタチにする」は、デザイン思考とアジャイルの考え方で、チームで企画からプロトタイプづくりまでを経験するプログラムです。企画書づくりの参考に、プログラムの詳細資料をご覧ください。

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この記事を書いた人

栗林 陽

栗林 陽(くりばやし よう)

株式会社aund 代表取締役 / 会議カルチャー改革ファシリテーター

新卒で東芝ソリューション(現・東芝)にて営業・PJ支援を経験後、ジェイテックスマネジメントセンター(現学研グループ)で企業研修の企画・販売に従事。新規事業部門でSaaSプロダクトマネージャーを経て、学研ホールディングス人事戦略室に出向し研修0→1立上げ・人材育成領域を担当。2019年、株式会社aund設立。会議ファシリテーション・組織開発・ワークショップ設計を強みに、現場に根づく変革を支援する。

学びの系譜
  • 2017年|社会起業大学 修了
  • 2019年|慶應MCC 組織開発実践講座 修了
  • 2022年|東京デザインプレックス研究所 UIUX講座 修了
  • 2026年|AI経営寄付講座 受講
  • 2026年|青山学院大学 ワークショップデザイン講座 修了
アドバイザリー実績
  • 2025年6月〜2026年3月|株式会社IKUSA 研修事業アドバイザリー
  • 2026年4月〜現在|株式会社東京チェンソーズ 研修事業アドバイザリー
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